2011 年 26 巻 3 号 p. 348-353
60歳,女性。1年前に左眉毛部に小結節を自覚し,徐々に増大したため当科を受診した。初診時左眉毛部に14 mm大の皮下結節を認めた。病理組織学的には,真皮から脂肪織にかけて腺管構造を形成した腫瘍細胞が粘液様物質中に浮遊するように増殖していた。CK7,GCDFP-15(Gross cystic disease fluid protein-15)陽性,CK20陰性であり,P63陽性の腫瘍細胞の裏打ちを認めた。また全身検索にて他に原発腫瘍を疑う所見はなかったため,Primary mucinous carcinoma of the skinと診断した。本疾患の本邦での治療方針は基底細胞癌に準じるとされているが,切除範囲について依然として統一した見解がない。欧米ではMohs surgeryがスタンダードな治療法となってきており,今回我々は術中迅速病理診断にその手法を加えた切除法で腫瘍を全摘した。術後1年半経過した現在,再発は認めていない。