抄録
57歳,男性。左足底円蓋部内側縁に,5mm大で不整形のやや濃淡差のある黒色斑がある。病理組織学的に表皮は不規則に肥厚あるいは萎縮しており,真皮浅層には軽度の炎症細胞,メラニン色素がやや不規則に分布している。軽度の異型性を有する個別性メラノサイトが基底層から表皮中層まで不均一に増殖しているが,一部の表皮突起先端には少数の境界明瞭な胞巣を形成している。HE所見からは足底母斑かメラノーマかの鑑別は困難であったが,Fontana-Masson染色で皮溝部の角質中心に比較的規則的なやや幅広のメラニン柱が明らかとなり,足底母斑と診断した。自験例は部位特異性を有する足底母斑であり,なおかつ足底無毛部と有毛部との境界部付近に位置しているため,pseudomelanomaの特徴を有したと考えられた。掌蹠母斑は病理組織学的にメラノーマに類似する所見をとることがあることを認識するとともに,鑑別にはFontana-Masson染色が極めて有用であることが確認できた。