抄録
症例は43歳,女性。2年前から,左乳頭部に黒色色素斑,痂皮を認め除々に拡大したため当科を受診。左乳頭部に色調不均一な黒色調の色素性病変がみられた。ダーモスコピーでは,irregular blotches,regression structures,blue-white structures,irregular streaksなどの所見がみられた。Bowen病や色素性Paget病のほか,ダーモスコピー所見からは特に悪性黒色腫を強く疑い乳頭部の全切除術を施行した。病理組織所見で表皮内~真皮上層および乳管内に大型で胞体の明るい腫瘍細胞が増殖しCEAやCK-7陽性を示したため,色素性乳房Paget病と診断した。乳頭部の色素性乳房Paget病のダーモスコピー所見の記載報告例はまだ少ないが,臨床所見と同様に悪性黒色腫に酷似し鑑別は難しいと考察されている。今回,我々も同様の1例を経験し,特にダーモスコピー所見と免疫組織化学的所見についての検討を加えて報告した。