2015 年 29 巻 2 号 p. 195-200
頭部皮膚転移により発見された潜在性乳癌の1例を報告する。84歳,女性。5年前より頭頂部に隆起性皮膚腫瘍が出現し,増大した。病理組織学的に真皮内から皮下脂肪組織内に,表層では索状,深部では粘液産生を伴う腫瘍細胞の集簇を認めた。腫瘍細胞の表皮や付属器への連続性は認めなかった。免疫染色ではCK7陽性,CK20陽性,ER陽性,PR陽性,CK5/6陰性,p63陰性を示した。PETを含む全身検索では他に原発巣を疑う所見はなく,潜在性乳癌もしくは皮膚原発汗腺癌が疑われた。
CK5/6陰性,p63陰性の染色パターンから頭部の皮膚病変は転移性乳癌の可能性が高いと判断し,本症例を臨床および病理学的所見から潜在性乳癌と診断した。乳癌の皮膚転移と皮膚原発アポクリン腺癌は病理学的上鑑別困難とされるが,両者の鑑別にCK5/6,p63は有用なマーカーと考えられた。