2015 年 29 巻 3 号 p. 289-292
Follicular SCC(FSCC)は毛包上皮から発生するSCCで,あまり広く知られてはいない。皮膚SCCの稀な一亜型と考えられており,毛包上部(漏斗部)より発生し通常のSCCの組織像を示す。毛包分化はない。今回我々はFSCCの1例を経験したので報告する。症例:67歳,女性。2ヵ月前より鼻尖部に弾性硬の大豆大の赤色結節を認めたため受診した。皮膚生検にてSCCの所見が得られた。リンパ節転移,遠隔転移の所見はなかったため,腫瘍の拡大切除術を施行した。手術標本の病理組織所見では,毛包漏斗部から連続して真皮深層にかけて,異型な角化細胞が胞巣をつくって浸潤性に増殖していた。腫瘍細胞は大小様々で,細かい腫瘍胞巣の浸潤性増殖が深部にまで及んでおり,一部は軟骨直上まで達していた。脈管浸潤像,神経浸潤像は確認できず,切除断端は陰性であった。以上よりfollicular SCCと診断した。術後10ヵ月経過した現在再発転移はみられない。