抄録
73歳,男性。初診3ヵ月前より左下口唇にびらんが出現,近医を受診し外用にて治療するも徐々に左右口唇に広がり当院を受診した。臨床像と病理組織所見から下口唇有棘細胞癌と診断し,皮膚側から粘膜側までの全層を含めて下口唇全体を切除しDeltopectoral flapを用いて再建した。術後翌日より食事,会話も可能であったが,審美性については離断術後にやや不自然であったので,後日下口唇修正術を施行した。術後は食事,会話に問題なく整容的にも満足が得られた。術後6ヵ月で右顎下リンパ節転移が認められたが右頸部郭清と術後照射を行い,術後14ヵ月の現在まで再発なく経過している。