2018 年 33 巻 1 号 p. 1-6
症例は31歳,女性。1年前より右踵の皮下腫瘤を自覚。初診時15 mm大の皮下腫瘤で,表皮囊腫などの良性腫瘍を疑われ経過観察となった。増大したため2年後に受診。中央に点状陥凹を持つ弾性硬,周囲との境界が不明瞭な20×12 mm高さ17 mm,灰褐色の皮下腫瘤。病理組織では真皮浅層から腱膜下の多結節性の腫瘍で,腫瘍細胞は核小体の目立つ類円形~短紡錘形核を有する異型紡錘形細胞巣と,メラニン色素沈着を伴う領域が混在。免疫染色では腫瘍細胞にVimentin,S-100,HMB 45,Melan-Aに陽性。FISH法でEWSR-1遺伝子のsplit signalが示されclear cell sarcoma(CCS)と診断。遠隔転移はなく辺縁より2 cmで踵骨骨膜を含め切除,広背筋皮弁術で再建。術後1年2ヵ月現在転移なし。CCSはしばしば診断までに時間を要する。緩徐に増大するが,予後不良の疾患であり,常に念頭に置く必要がある。