2018 年 33 巻 1 号 p. 7-12
76歳,男性。初診5年前より右眼に流涙を認め,他院眼科で生検され右眼窩部導管癌と診断された。切除希望なく放射線療法を施行された。照射1年後,右頸部に暗赤色斑が出現,徐々に拡大し,嚥下困難も出現し,近医より当科紹介受診した。初診時,右耳前部から頸部にかけて広範囲に境界明瞭な硬結を伴う暗赤色斑を認め血管肉腫を疑った。PET/CT画像で右頸部リンパ節転移,多発骨転移,肺転移を認めた。生検病理組織より右眼窩部導管癌の皮膚転移と診断した。病変部への放射線治療を施行,カルボプラチン,エピルビシンによる化学療法を3回施行し,皮膚症状は著明に改善,嚥下困難も軽快した。その後,左頸部への新たな皮膚転移,右口腔内有棘細胞癌を認め,緩和的放射線療法を施行した。眼窩部の導管癌は報告が少なく皮膚転移は稀である。丹毒様紅斑を呈した機序について,腫瘍細胞がリンパ管内で塞栓を形成し,真皮・皮下組織への浸潤を来したためと推察した。