2018 年 33 巻 1 号 p. 50-54
79歳,女性。右上眼瞼にびらん,眼脂が出現,生検の結果有棘細胞癌であることが確認された。腫瘍は眼瞼結膜と眼球結膜移行部まで浸潤しており,根治療法には眼球摘出術が必要であった。しかし患者は手術以外の治療を希望したため,化学療法施行目的に当科紹介受診となった。まずぺプレオマイシン(以下:PEP)(5mg/5mL/週)の筋肉注射単独療法を施行したが効果が乏しく,TS-1の内服と5-FUの外用療法に変更した。その後,腫瘍径は縮小し治療効果が得られた。当科初診から1年10ヵ月後の時点でも,腫瘍の増大,眼症状や化学療法による副作用を認めず経過している。眼球結膜に浸潤を認めた眼瞼部有棘細胞癌に対し,TS-1の内服療法や5-FUの外用療法を選択することは,とりわけ切除不能な症例の場合には今後期待できる非外科的治療オプションのひとつである。