2019 年 34 巻 2 号 p. 203-207
62歳,女性。4歳時に手関節部に熱傷を受傷した。2ヵ月前から,同部の瘢痕上にびらんが出現し,難治であった。皮膚生検で有棘細胞癌と診断した。瘢痕を含めて,下床は手根屈筋腱が露出する深さまで広く切除した。グリコサミノグリカン含有人工真皮(IntegraⓇ)で一時的に被覆し,3週間後に分層植皮術を施行した。術後2年経過した現在,再発・転移の徴候はない。植皮部は指でつまめるほどの柔軟性や弾力性を保ち,関節可動域制限を認めない。グリコサミノグリカン含有人工真皮により構築される真皮様組織は通常の人工真皮と比べて炎症反応が抑えられ,マトリックスの架橋構造が厚いコラーゲン層を形成するため瘢痕生成が抑えられ,移植皮膚は弾力性と柔軟性に富む。