2020 年 35 巻 3 号 p. 118-124
85歳,女性。左側頭部の紅色結節および左耳前部リンパ節腫脹が出現した。病理組織学的所見にて,真皮内に不規則な管腔を形成し増殖する異型細胞がみられ,免疫染色ではCD31陽性,CD34陽性であり,血管肉腫と診断した。タキサン系抗癌剤による化学放射線治療やエリブリン投与を行うも局所再発を繰り返した。多発肺転移が出現したため,4th lineとしてパゾパニブ投与を開始した。経過中に血小板減少などの副作用が出現したが減量することで投与継続可能だった。パゾパニブにより部分奏効を9ヵ月間維持したが,その後に十二指腸転移を来し,同部位の穿孔により永眠した。高齢者に多い頭部血管肉腫において,経口投与であるパゾパニブは有用な治療であると考える。また症状が出現することは少ないが消化管転移は決して稀ではなく,貧血や腹部症状があれば消化管転移の鑑別が必要である。