2021 年 36 巻 1 号 p. 71-75
91歳,男性。既往にハンセン病,尿管癌がある。ADLが悪く,ほぼ寝たきり状態。2年前に顔面神経麻痺のある左頬にびらんと痂皮が散在し,日光角化症として液体窒素などで加療されていたが,腫瘤になり徐々に増大し,生検で有棘細胞癌と診断された。他院では手術や放射線治療が検討されたが保存的治療の方針となっていた。創部を触る動作が増えたためアセトアミノフェン内服,潰瘍面より出血がありモーズ療法を行っていた。その後さらに腫瘤は増大し,当科を紹介受診した。左頬に中央に潰瘍を伴う12×10 cmの淡紅褐色,広基性の腫瘤があった。CTではリンパ節,遠隔転移は認めなかった。超高齢でADLが悪く,低アルブミン血症,胸水があり,腫瘤が大きく輸血が必要でハイリスク症例であった。局所制御目的で全身麻酔下に切除,植皮を行った。しかし術後5ヵ月後に肺炎で永眠された。