2024 年 39 巻 1 号 p. 20-25
皮膚原発有棘細胞癌に対する治療の第一選択は手術療法であるが,局所進行のため切除不能な例に対する標準治療が存在しないのが現状である。我々は頭蓋骨に浸潤した皮膚原発有棘細胞癌の症例を2例経験した。いずれも手術療法は困難と判断し,頭頸部癌に対する導入化学療法として行われるTPF療法(ドセタキセル/シスプラチン/フルオロウラシル)と同時に放射線療法を施行した。両例ともTPF療法1コースと,総線量50 Gyの放射線療法により腫瘍の著明な縮小効果が得られた。その後根治的な手術療法を行い,良好な結果を得ている。TPF療法を用いた同時化学放射線療法は,好中球減少や発熱性好中球減少症を生じる頻度が高いとされているが,投与量の調整などの有害事象への対策をとることで安全に施行することができた。本法は,切除困難な皮膚原発有棘細胞癌に対する術前化学放射線療法として有用な選択肢であると考える。