2025 年 40 巻 2 号 p. 138-142
37歳,男性。既往にFanconi貧血,骨髄移植,慢性GVHD,食道扁平上皮癌,扁平上皮癌肺転移。右陰囊に浸潤を触れる紅斑が出現したため当科を受診した。6 mmマージンで切除し,病理組織学的所見にてBowen病と診断した。PCR法でハイリスクHPVは検出されなかった。自験例をFanconi貧血に合併したBowen病と考えた。Fanconi貧血はFA/BRCA DNA修復経路の生殖細胞変異により発症する疾患であり,悪性腫瘍を発症し易い。Fanconi貧血に合併した皮膚悪性腫瘍としては有棘細胞癌,基底細胞癌が報告されており,Bowen病は稀である。Fanconi貧血に発生するBowen病は露光部やハイリスクHPVに関連して生じることがあるが,自験例は非露光部でハイリスクHPVも陰性であったため,非露光部でハイリスクHPVが陰性でもBowen病が発生することがあるため慎重な定期経過観察が必要になる。