抄録
表皮のturn over rateが実験的発癌にいかなる影響を与えるかを知る目的で以下の実験を試みた。すなわちd-d系マウス背皮の角層を剥離し, 直ちに20-methylcholanthreneを塗布することを繰り返し, 発癌状態を観察した。その結果, 剥離処置を加えた群では毛包由来のケラトアカントーマ様扁平上皮癌の発生が対照群に比べて著明に抑制された。組織学的には剥離処置群の毛包は長くほぼ正常に保たれ, 成長期の像を示したが, 対照群では破壊と異型性が目立った。以上の所見から癌発生の抑制は角層剥雑処置群の毛包の成長期が長期間続くためではないかと考えた。