抄録
症例は64歳, 男性。15年前より, 前額部に腫瘍を自覚していた。自壊したため, 近医を受診したところ, 粉瘤と診断された。切開・排膿処置後, 創治癒が遷延したため当科を紹介受診した。前額部ほぼ中央に潰瘍を有する径3cmの硬結を認めた。生検を行ったところ, morphea-like BCCと診断された。後日, 全身麻酔下に切除術を行った。病変部から5mmのマージンをとり, 骨膜上で切除し人工真皮を貼付した。側方および深部の切除断端が陰性であることを病理組織学的に確認し, その2週間後に含皮下血管網植皮術を行った。病理組織学的所見では, 破裂した正常表皮嚢腫と考えられる壁から連続性に好塩基性に染まる腫瘍細胞を認めたため, 粉瘤から生じたBCCであると診断した。腫瘍は間質の増生を伴い, 小さな腫瘍巣を持ちながら, 浸潤性に周囲組織に増殖していた。