抄録
有棘細胞癌は耳介原発の皮膚悪性腫瘍の約半数を占め, 腫瘍の切除により生じた欠損に対しては, しばしば組織移植による耳介皮膚, 軟骨再建を要する。我々は, 耳介後面に発生した有棘細胞癌の切除により耳介後面の1/2の皮膚および軟骨の欠損を生じた症例に対して耳介再建を行った。耳介軟骨の欠損が広範囲に及んでいたため, 肋軟骨移植が必要と考えたが, 患者が肋軟骨移植を希望しなかった。そのため, 耳介を縮小した上で軟骨形成を行う方針とした。耳前部皮膚の楔状切除, chondrocutaneous advancement flapを用いて耳介を縮小し, 健側の耳甲介軟骨移植, 側頭頭頂筋膜弁移植および分層植皮術を用いて耳介を再建した。術後1年で腫瘍の再発・転移を認めていない。また, 再建された耳介は健側耳介に比べて小さく変形を残すが, 眼鏡を装用することが可能である。