抄録
症例は58歳, 女性。生下時より左後頭部に疣贅様局面が存在していたが, 10年前より同部に腫瘤が生じ徐々に増大してきたため当科受診。初診時, 疣贅様局面内に易出血性の小鶏卵大, 表面細顆粒状の紅色肉芽腫様腫瘤が存在。組織学的に小鶏卵大の腫瘍は, 主に基底細胞様細胞からなっていたが, 中央になるに従い胞体が明るく空胞化していた。またこの腫瘍辺縁と連続性に基底細胞様細胞からなる腫瘍巣が見られ, 別の切片では, 基底細胞様細胞からなる腫瘍巣内に脂腺構造が認められた。以上の所見より脂腺母斑上に生じた悪性外毛根鞘腫, 基底細胞癌 (BCC) , 脂腺上皮腫の併発例と診断した。この3腫瘍に対し抗involucrin抗体と11種類の抗keratin抗体, 抗EMA抗体を用いて免疫組織化学染色を行ったところ, 共通して見られたbasaloid cellの染色性に差異が見られ, また自験例におけるBCCは通常のBCCとケラチンの発現が多少異なっていることが判明した。