Skin Cancer
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癌転移と接着分子
済木 育夫
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1992 年 7 巻 1 号 p. 26-32

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抄録

癌の転移形成過程は癌細胞相互あるいは癌細胞と宿主の細胞 (特に血管内皮細胞, 免疫系細胞や血小板など) あるいは細胞外マトリックスなどの種々の生体成分との間の複雑な反応カスケードから成り立っており, これらの相互作用は癌細胞の転移形質の発現に重要な役割を果たしていると考えられる。最近, 多くの細胞接着に関与する分子およびその受容体が明らかにされつつあり, その制御ならびに分子機構が注目されている。従来, 細胞外マトリックスを構成する接着分子としてフィプロネクチンおよびラミニンなどが癌の転移と深く関係していることが示唆されてきた。私共は癌の転移とその形成過程における細胞接着分子およびその分子との相互作用に着目し, いくつかの接着ポリペプチド (特にフィプロネクチン由来の細胞認識配列RGD関連ペプチド) を用いて癌細胞の機能 (接着性・運動性・浸潤能など) を制御することにより, 癌転移の抑止とその機序を解明しようとする試みを行ってきた。本研究はさらに癌転移の防止あるいは治療に有効な薬剤開発の手がかりを与えるものと思われる。

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© 日本皮膚悪性腫瘍学会
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