1992 年 7 巻 1 号 p. 90-93
腎腫瘍内への腫瘍内腫瘍転移を伴った, 鼻部に発生したMerkel cell tumorの1例を経験した。鼻部皮膚腫瘍は, 転移性腫瘍の可能性を考え全身検索を施行したところ, 無症候性に経過していた潜在性腎腫瘍が明らかとなり, 切除術を受けた。光顕的に, 腎腫瘍は大部分Grawitz腫瘍であったが, 一部には鼻部腫瘍と同じ好塩基性に強く染まる小型の腫瘍細胞塊を認めた。鼻部腫瘍は, 電顕にて腫瘍細胞内にfilamemtの集塊像, dense core granule, desmosome様構造を認め, 免疫組織学的にNeuron-specific enolase (NSE) 弱陽性, クロモグラニン, 抗ケラチン抗体陽性であったことから, Merkel cell tumorと考えた。