汗は抗菌・保湿など皮膚の恒常性維持に貢献する一方,アトピー性皮膚炎の増悪因子であるとも考えられている。実際にシャワー浴による汗対策が重症度を改善させ皮膚表面の黄色ブドウ球菌量の減少を導く。ところがアトピー性皮膚炎患者に対して行った定量的軸索反射性発汗試験では健常者に比し軸索反射性発汗量の有意な減少と,発汗に要する時間の有意な延長が皮疹の有無に関わらず認められた。総合的に解釈すると,アトピー性皮膚炎病態形成における汗の関与は「発汗」という生理機能と「かいた後の汗」に対する反応に分けて考える必要があり,発汗量の減少あるいは古い汗がバリア機能を破綻させるのではないかと想像された。(皮膚の科学,増16: 50-53, 2011)