抄録
26歳,男性。顔面に 3×1cm の波動を伴うなだらかに隆起する嚢腫状の病変を認めた。発赤,腫脹はみられたが,局所熱感はなかった。皮膚生検ではリンパ球を伴う肉芽腫様の炎症反応を認め,膿の細菌培養からは Runyon 分類IV群の迅速発育抗酸菌のコロニーを認めた。DNA-DNA ハイブリダイゼーション法では反応する菌種を同定できなかったが,抗酸菌特異的配列を標的とするプライマーを用いたシークエンス法で確定された塩基配列は,BLAST 検索で Mycobacterium fortuitum の配列に一致した。レボフロキサシンとミノサイクリンの内服を2ヶ月継続し,皮下の嚢腫状の病変は消失し,局面のみとなった。その後2年半再発はない。DNA-DNA ハイブリダイゼーション法のみでは,抗酸菌の菌種によっては偽陰性を示すことがあるため注意を要する。(皮膚の科学,11: 92-95, 2012)