症例1:20歳代,男性。5年前に皮膚筋炎と診断され,ステロイドおよびアザチオプリンにより加療されていた。右上肢に皮下膿瘍が出現し,膿汁より Mycobacterium chelonae(以下,M. chelonae) を同定した。切開排膿およびデブリードマンと洗浄,8週間の CAM(クラリスロマイシン)内服で5ヶ月後に治癒した。症例2:50歳代,男性。尋常性天疱瘡に対し,5年来のステロイド内服に加え,血漿交換療法,各種免疫抑制療法を施行していた。転倒で右足背を受傷し,その6ヶ月後,受傷部位に皮下硬結が出現した。皮膚生検を施行し,組織より M. chelonae を同定した。CAM 内服を27週間継続したが,皮下結節の増数あり,PUFX(プルリフロキサシン)内服を追加,その後,1年2ヶ月増悪なく経過している。症例1,2ともに,原疾患に対する治療による免疫抑制状態に生じており,病変は皮膚に限局していた。症例2では完治に至っておらず,抗菌薬治療には限界があると考えた。M. chelonae 感染症の本邦既報告例の治療法をまとめ,薬剤感受性試験についても考察を加えた。(皮膚の科学,11: 96-102, 2012)
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