皮膚の科学
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症例
色素性および無色素性基底細胞癌を発症した1例
織田 好子一角 直行堀川 達弥
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2015 年 14 巻 2 号 p. 62-66

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抄録

79歳,女性。初診の1ヶ月前より,眉間部に2倍米粒大の灰黒色丘疹が出現した。皮膚生検の結果,基底細胞癌(BCC)と診断し拡大切除後,経過観察をしていた。術後5年,鼻背部左側に淡紅色小結節が出現し,ダーモスコピーにて arborizing vessels を認めた。皮膚生検の結果,無色素性 BCC と診断し,腫瘍の拡大切除を行った。自験例において色素性 BCC と無色素性 BCC について病理組織学的な比較検討を行った。色素性 BCC では病巣内に樹状突起の発達した大型のメラノサイトやメラノファージおよびメラニン顆粒を認めた。無色素性 BCC では病変の一部ではメラノサイトが消失し,その他の部分では小型の円形で樹状突起の乏しいメラノサイトがあり,メラノファージはなく,HE 染色や Fontana-Masson 染色ではメラニン顆粒またはユーメラニン顆粒は見られなかった。自験例の無色素性 BCC において色素が見られなかったのは病変部にメラノサイトが存在していないため,あるいはメラノサイトが存在してもメラニン産生が抑制されていたためであると考えられた。(皮膚の科学,14: 62-66, 2015)

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© 2015 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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