皮膚の科学
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14 巻, 2 号
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研究
症例
  • 織田 好子, 一角 直行, 堀川 達弥
    2015 年 14 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/19
    ジャーナル 認証あり
    79歳,女性。初診の1ヶ月前より,眉間部に2倍米粒大の灰黒色丘疹が出現した。皮膚生検の結果,基底細胞癌(BCC)と診断し拡大切除後,経過観察をしていた。術後5年,鼻背部左側に淡紅色小結節が出現し,ダーモスコピーにて arborizing vessels を認めた。皮膚生検の結果,無色素性 BCC と診断し,腫瘍の拡大切除を行った。自験例において色素性 BCC と無色素性 BCC について病理組織学的な比較検討を行った。色素性 BCC では病巣内に樹状突起の発達した大型のメラノサイトやメラノファージおよびメラニン顆粒を認めた。無色素性 BCC では病変の一部ではメラノサイトが消失し,その他の部分では小型の円形で樹状突起の乏しいメラノサイトがあり,メラノファージはなく,HE 染色や Fontana-Masson 染色ではメラニン顆粒またはユーメラニン顆粒は見られなかった。自験例の無色素性 BCC において色素が見られなかったのは病変部にメラノサイトが存在していないため,あるいはメラノサイトが存在してもメラニン産生が抑制されていたためであると考えられた。(皮膚の科学,14: 62-66, 2015)
  • 倉沢 友輔, 庄司 昭伸, 夏秋 優
    2015 年 14 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/19
    ジャーナル 認証あり
    患者は大阪府豊能郡能勢町在住の72歳女性。2014年4月下旬,自宅付近の用水路に入り,草刈りをした。翌日,四肢・体幹にそう痒を伴う紅斑が出現し,その2日後に当科を受診した。初診時,四肢・体幹に紅斑,丘疹,小水疱が孤立性に多発し,その中央に虫体を認めた。皮疹部から50体以上の虫体を摘除し,タカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium)の幼虫と同定した。皮疹部の病理組織では真皮の血管周囲性にリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤を認めた。塩酸ミノサイクリンの14日間内服および10%クロタミトン含有クリーム外用にて皮疹は軽快した。経過中,全身症状は出現しなかった。近年の山間部における野生動物の増加が,マダニ刺症の増加と関連すると推察した。(皮膚の科学,14: 67-72, 2015)
  • 南 志乃, 藤本 徳毅, 高山 悟, 山下 真未, 山本 文平, 中西 健史, 田中 俊宏
    2015 年 14 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/19
    ジャーナル 認証あり
    70歳代,女性。2014年2月より左足関節部に皮膚潰瘍が出現し,前医で血管炎を疑われプレドニゾロン 10mg/日を投与されたが,皮膚潰瘍の拡大が続くため4月に当院を受診した。初診時の血液検査で抗リン脂質抗体を認め,潰瘍周囲からの皮膚生検では真皮浅層から深層にかけて血栓像がみられた。5月の受診時に血小板減少,急性腎不全および神経学的異常を認めたため精査目的にて入院となった。尿路感染症も認めたため,抗菌剤投与による治療を開始したが,腎機能障害と炎症反応は数日で急速に進行した。腹部 CT にて多発微小血栓による腎炎,頭部 MRI で新旧混在する多発脳梗塞を認めた。臨床経過と検査結果より本症例を劇症型抗リン脂質抗体症候群と診断し治療を開始した。ワルファリンカリウムと高用量ステロイド剤の全身投与を開始したところ,炎症反応は比較的速やかに消退し,腎機能障害も改善した。皮膚潰瘍は外科的治療を要せずに縮小した。劇症型抗リン脂質抗体症候群は急速に進行し致死的になり得るため,本疾患を疑った場合は速やかに治療を開始しなければならない。(皮膚の科学,14: 73-78, 2015)
  • 濱井 公平, 野村 尚史, 松井 美萌, 陳 文, 岡本 英一
    2015 年 14 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/19
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病性浮腫性硬化症によりインスリン治療抵抗性を示した7例を報告する。患者は55才から87才(男4:女3)で,インスリン注射部位は適切にローテーションされており,同部位に外傷や瘢痕はなかった。しかし病理組織学的には注射部位の真皮が高度に肥厚しており,浮腫性硬化症と診断した。以上から真皮肥厚がインスリン反応不良の原因と考え,注射角度又は部位の調整・変更を指導したところインスリン反応性が改善した。一般的に浮腫性硬化症は後頸部に好発するが,広域に発症しうると考える。従って,インスリン治療抵抗性を示す糖尿病患者では,糖尿病性浮腫性硬化症がインスリン吸収障害の一因である可能性を考えるべきである。(皮膚の科学,14: 79-84, 2015)
  • 高山 悟, 藤井 紀和, 加太 美保, 田中 俊宏
    2015 年 14 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/19
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男性。初診時,左上背部に径 20mm の弾性軟な有茎性暗赤色結節を認めた。病理組織学的には真皮浅層から深層にかけて紡錘形の腫瘍細胞が増殖し,腫瘍内には多核巨細胞や出血像,ヘモジデリンの沈着,赤血球で満たされた裂隙を認めた。免疫組織化学染色では ビメンチンが陽性,CD68 が一部陽性,CD34,EMA,デスミン,Melan-A,S-100,HMB-45 が陰性であった。以上より aneurysmal fibrous histiocytoma と診断した。本症は臨床的に悪性腫瘍との鑑別診断が必要になり,免疫組織化学染色がその一助になりうると考えられた。PET/CT で SUVmax はやや高い値を示したが,線維芽細胞性の腫瘍細胞成分が豊富なためと考えられた。(皮膚の科学,14: 85-88, 2015)
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