2016 年 15 巻 1 号 p. 8-11
60歳代,女性。2014年9月に左腋窩リンパ節の腫脹を自覚していた。同年11月の造影 CT で,左頸部,鎖骨上窩,腋窩,肩甲部に皮下腫瘤とリンパ節腫大を認め,病理組織学的に悪性黒色腫の診断であったため,当科へ紹介された。左腋窩および左肩甲部の腫瘍を可能な限り切除し,ダカルバジン(DTIC)およびニボルマブによる化学療法を施行したが,腫瘍の増大を抑えることは困難であった。切除標本の遺伝子検索で BRAF 遺伝子変異が認められたため,ベムラフェニブの投与を開始した。投与期間中に肝機能障害,光線過敏症を認めたが腫瘍は著明に縮小した。しかし投与開始3ヶ月後に治療抵抗性となり,6ヶ月後に永眠された。BRAF 遺伝子変異陽性で急速に増大する悪性黒色腫に対しベムラフェニブは有力な治療の選択肢であると考えた。(皮膚の科学,15: 8-11, 2016)