近年では,従来と比較して narrow-band UVB やエキシマライトなどの簡便で有効な照射器の開発により紫外線療法が広く普及してきた。安全で適正な治療を行うに当たっては,照射器の特性と紫外線に関する基礎的な知識が必要と考える。皮膚は数多くの分子,細胞,組織から複雑に構成されており,照射された光線は皮膚の種々のレベルで反射,散乱,吸収されつつ透過する。均一な媒体での透過性とは異なり,皮膚における紫外線の透過性は波長に依存し,波長が長いほど深部に到達する。ただし,到達したすべての光線が治療効果を示すわけではない。皮膚に存在する chromophore が光のエネルギーを吸収して光化学反応を起こさない限り,治療効果などの光生物反応を生じることはない。光生物反応は照射量に依存する。照射量が同一であれば,紫外線の強度(irradiance,照射率,輝度)や照射時間とは無関係である(reciprocity law,相反則)。紫外線療法の奏効機序には,病変部に到達した紫外線の直接作用以外に間接作用も関与している。全身照射とターゲット照射にはそれぞれ利点と欠点がある。(皮膚の科学,15: 1-7, 2016)
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