皮膚の科学
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15 巻, 1 号
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総説
  • 堀尾 武
    2016 年 15 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル 認証あり
    近年では,従来と比較して narrow-band UVB やエキシマライトなどの簡便で有効な照射器の開発により紫外線療法が広く普及してきた。安全で適正な治療を行うに当たっては,照射器の特性と紫外線に関する基礎的な知識が必要と考える。皮膚は数多くの分子,細胞,組織から複雑に構成されており,照射された光線は皮膚の種々のレベルで反射,散乱,吸収されつつ透過する。均一な媒体での透過性とは異なり,皮膚における紫外線の透過性は波長に依存し,波長が長いほど深部に到達する。ただし,到達したすべての光線が治療効果を示すわけではない。皮膚に存在する chromophore が光のエネルギーを吸収して光化学反応を起こさない限り,治療効果などの光生物反応を生じることはない。光生物反応は照射量に依存する。照射量が同一であれば,紫外線の強度(irradiance,照射率,輝度)や照射時間とは無関係である(reciprocity law,相反則)。紫外線療法の奏効機序には,病変部に到達した紫外線の直接作用以外に間接作用も関与している。全身照射とターゲット照射にはそれぞれ利点と欠点がある。(皮膚の科学,15: 1-7, 2016)
症例
  • 小谷 晋平, 鷲見 真由子, 大森 麻美子, 小坂 博志, 小川 真希子, 長野 徹, 今井 幸弘, 木川 雄一郎, 加藤 大典
    2016 年 15 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル 認証あり
    60歳代,女性。2014年9月に左腋窩リンパ節の腫脹を自覚していた。同年11月の造影 CT で,左頸部,鎖骨上窩,腋窩,肩甲部に皮下腫瘤とリンパ節腫大を認め,病理組織学的に悪性黒色腫の診断であったため,当科へ紹介された。左腋窩および左肩甲部の腫瘍を可能な限り切除し,ダカルバジン(DTIC)およびニボルマブによる化学療法を施行したが,腫瘍の増大を抑えることは困難であった。切除標本の遺伝子検索で BRAF 遺伝子変異が認められたため,ベムラフェニブの投与を開始した。投与期間中に肝機能障害,光線過敏症を認めたが腫瘍は著明に縮小した。しかし投与開始3ヶ月後に治療抵抗性となり,6ヶ月後に永眠された。BRAF 遺伝子変異陽性で急速に増大する悪性黒色腫に対しベムラフェニブは有力な治療の選択肢であると考えた。(皮膚の科学,15: 8-11, 2016)
  • 原田 潤, 西野 洋輔, 中島 武之, 伏見 博彰
    2016 年 15 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル 認証あり
    80歳代男性。13年前より誘因なく両上肢・上背部に自覚症状を伴わない常色,弾性軟の結節が多発し,徐々に増数し,個々の結節は最大径 14mm までに増大してきた。病理組織像では,周囲を薄い被膜に覆われた,束状に増生した紡錘形の細胞から成る結節性の病変を,真皮内に散在性に認めた。Bodian 染色にて線維状の神経軸索が病変内に散在していた。免疫染色では紡錘形細胞は S-100 蛋白陽性で,被膜の一部は EMA 陽性であった。本症例は外傷の既往なく発症した臨床症状から外傷性神経腫と鑑別し,palisaded encapsulated neuroma とは多発性に生じた点と病理学的所見から鑑別した。本症例の病理所見は多発性粘膜神経腫と同一であるが,内分泌異常や他の腫瘍病変は認められなかった。多発性粘膜神経腫には特発性に生じ内分泌異常などを伴わないものもあるが,本症例では口腔粘膜に結節病変はなかったため,多発性粘膜神経腫ではなく多発性皮膚神経腫(Multiple cutaneous neuromas)と診断した。(皮膚の科学,15: 12-16, 2016)
  • 小坂 博志, 小谷 晋平, 大森 麻美子, 小川 真希子, 長野 徹, 小坂 恭弘, 小久保 雅樹, 諏訪 達也, 伊藤 仁, 平岡 眞寛
    2016 年 15 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル 認証あり
    80歳代男性の右耳介部,および80歳代女性の左頬部に生じたメルケル細胞癌の2例を経験した。いずれも画像所見にて所属リンパ節転移,遠隔転移を認めず,手術療法を治療の第一選択として提案したが,同意を得られなかったため放射線単独療法を開始した。腫瘤は速やかに消失し,以後16ヶ月以上,再発,転移はない。米国 National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドライン2016年度版において N0 症例に対しては広範囲切除およびセンチネルリンパ節生検が推奨されているが,メルケル細胞癌は放射線感受性の高い腫瘍であり,完全切除が困難な場合や手術拒否例では放射線単独療法も容認されるとしている。自験例のような手術拒否例,高齢者,および根治的手術が困難な症例には放射線単独療法も考慮すべきと考えた。(皮膚の科学,15: 17-22, 2016)
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