皮膚の科学
Online ISSN : 1883-9614
Print ISSN : 1347-1813
ISSN-L : 1347-1813
症例
アトピー性皮膚炎の加療中にシェーグレン症候群と原発性胆汁性肝硬変を発見した1例
土山 真司鷲尾 健高砂 恵美正木 太郎福永 淳小川 聡斉藤 雅也矢野 嘉彦錦織 千佳子
著者情報
ジャーナル 認証あり

2016 年 15 巻 2 号 p. 51-56

詳細
抄録

40歳代,女性。幼少時期よりアトピー性皮膚炎と診断され加療を受けてきたが,最近では治療を自己中断していた。2015年春頃より全身のそう痒が増悪したため近医より当科に紹介受診となり,精査加療目的に入院した。季節の変わり目に皮疹が悪化するとの訴えがあり,うつ熱症状もあったため発汗機能異常を疑い全身温熱発汗テストを施行したところ顔面や体幹部の発汗低下を認めた。齲歯も複数あり,外分泌腺機能低下を疑い精査を進めたところ,抗 SS-A,SS-B 抗体陽性であり小唾液腺の導管に多数の細胞浸潤を認めシェーグレン症候群との診断に至った。アトピー性皮膚炎に対して外用治療を開始したところ,皮膚所見や好酸球の減少とは逆に肝逸脱酵素の数値が上昇した。シェーグレン症候群合併例のため,他の自己免疫疾患の併発についても精査したところ原発性胆汁性肝硬変が判明した。アトピー性皮膚炎では一般的に発汗機能異常が認められるが,発汗低下が著明な場合はシェーグレン症候群の合併も考慮に入れる必要があると考えられた。またアトピー性皮膚炎治療中に原発性胆汁性肝硬変に関連した肝逸脱酵素の数値が上昇した原因につき,Th1/Th2/Th17 バランスを含めて考察した。(皮膚の科学,15: 51-56, 2016)

著者関連情報
© 2016 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
前の記事 次の記事
feedback
Top