70歳代,男性。初診の1年半前に,頸部に結節が出現し,その後体幹にも皮疹が出現した。頸部の結節は近医でのステロイド剤局所注射療法で縮小した。その後,顔面に腫脹,びらんが出現し,近医でベタメタゾン内服,クロベタゾールプロピオン酸エステル外用療法を受けたが改善なく,精査加療目的で当科を紹介された。初診時,顔面に軽度そう痒を伴う浸潤を触れる紅色から紅褐色の紅斑と局面が多発し,その多くは融合していた。体幹・四肢は紅色から紅褐色の紅斑が多発し,融合傾向を示していた。当科での1回目の生検では毛包内と毛包周囲にリンパ球の浸潤とムチンの沈着が認められ,毛包性ムチン沈着症と診断した。ソラレン内服後の内服 PUVA 療法を開始したが,一時的に効果を認めただけで皮疹は悪化傾向を示した。初診3ヶ月後の当科での3回目の生検の結果,毛包内と毛包周囲に異型リンパ球の浸潤が見られ folliculotropic mycosis fungoides(FMF)と診断した。Pirarubicin,cyclophosphamide,vincristine,prednisolone による THP-COP 療法を開始するも著効せず,脳への転移が考えられる所見が認められ,その1ヶ月後に永眠された。調べ得た限りでは FMF で脳転移がみられた報告例はなかった。FMF は mycosis fungoides(MF)と臨床症状が異なり,病理組織所見も多彩なため確定診断までに時間を要することがある。しかし MF と比較して病期進行が早く予後が悪いため,できる限り早期に診断し治療開始する必要があると考えられた。(皮膚の科学,15: 68-74, 2016)
抄録全体を表示