皮膚の科学
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症例
舌癌に対して投与された Cetuximab が顔面基底細胞癌にも有効であった1例
山口 明彦藤本 徳毅南 志乃本田 真一朗加藤 威鵜飼 佳子堤 泰彦田中 俊宏
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キーワード: cetuximab, 基底細胞癌, 舌癌
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2016 年 15 巻 3 号 p. 107-111

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抄録

70歳代,女性。2011年頃に左外眼角部に小結節が出現し,徐々に増大してきた。皮膚生検で基底細胞癌と診断されたが,外科的切除は希望しなかった。舌癌(pT2N2M0 stage III)のリンパ節節外浸潤に対し放射線療法と Cetuximab 投与を開始されたところ,基底細胞癌は縮小した。Cetuximab の副作用により投与を終了してからは,基底細胞癌は再び増大してきた。本人の同意が得られたため外科的切除を行い,その後基底細胞癌の再発は認めていない。Cetuximab は上皮成長因子受容体(EGFR)に対する分子標的治療薬であり,本邦では EGFR 陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に加えて頭頸部癌に対する適応が承認されている。海外では切除不能の有棘細胞癌に対して第II相試験で有効性が示されており,本邦での臨床応用が期待される。基底細胞癌の発癌機序には Hedgehog 経路の関与が重要とされているが,EGFR により活性化される mitogen-activated protein kinase 経路は Hedgehog 経路と共同して細胞の癌化に関与するといわれている。Cetuximab は RAS 遺伝子の変異があると治療効果がないため,EGFR 陽性で RAS 遺伝子に変異がないことを確認できれば基底細胞癌においても Cetuximab の効果が期待できるものと思われる。(皮膚の科学,15: 107-111, 2016)

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© 2016 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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