2016 年 15 巻 4 号 p. 259-264
70歳代,女性。2012年6月健診で胸部異常陰影を指摘され,胸腺腫(MASAOKA III期)と診断された。2013年6月より皮疹が出現し,徐々に全身に拡大。同年10月当科初診時,全身に鱗屑を伴う紅斑が多発・融合し,ほぼ紅皮症状態を呈していた。皮膚生検にて表皮内の個細胞壊死,リンパ球浸潤,表皮真皮境界部の液状変性が認められた。肝機能障害もあわせ,胸腺腫に関連した graft-versus-host like disease と診断した。手術は施行せず,ステロイド外用などで経過観察していたが,同年11月下旬,肺炎で永眠した。胸腺腫に皮膚症状が出現した場合,本疾患を念頭に置く必要があると思われる。本疾患は重篤な感染症で死亡する症例が多く,皮膚症状,特に紅皮症出現後の予後は極めて不良である。(皮膚の科学,15: 259-264, 2016)