皮膚の科学
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15 巻, 4 号
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カラーライブラリー
症例
  • 東 禹彦
    2016 年 15 巻 4 号 p. 250-253
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    50歳,女性。平成19年5月から右手拇指爪に縦裂を生じた。平成22年11月に右拇指が腫脹した。皮膚科で治療を受けていたが,平成23年1月から右拇指の疼痛のために眠れない夜が2週間おきくらいにおきて,ファロム®の投与を受けた。平成23年4月にはホスミシン®の投与を受けた。平成23年5月18日には爪甲除去術を受けた。その際,フサリウムとカンジダが検出された。ラミシール®錠を投与されたが,軽快せず当院に紹介され,平成23年8月26日受診した。右手拇指爪甲の一部は混濁し,後爪郭部に疼痛を訴えた。当院でもフサリウム属菌を検出した。イトラコナゾール 100mg/日の投与により後爪郭部の疼痛は消失したが,爪甲の混濁は持続した。平成24年6月9日からフルコナゾール 100mg/日に変更したが,爪甲の混濁は持続した。平成24年10月28日からはボリコナゾール 200mg/日を投与した。爪甲の混濁はどんどん軽快し,平成25年6月8日には完治した。健康な成人女性に生じた爪フサリウム症でボリコナゾールが著効を示した。(皮膚の科学,15: 250-253, 2016)
  • 金山 美恵, 立石 千晴, 平田 央, 小林 裕美, 鶴田 大輔
    2016 年 15 巻 4 号 p. 254-258
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    10歳代,男性。急性骨髄性白血病に対し臍帯血移植を施行された。移植後69日目に両頬部と頸部に強いそう痒を伴う紅色丘疹と膿疱が集簇性に出現した。末梢血中に著明な好酸球増多(白血球数 14,100/ml,好酸球53.0%,7,420/ml)がみられ,病理組織で毛包内と周囲に多数の好酸球主体の炎症細胞浸潤を認めた。膿疱内の細菌培養は陰性。好酸球性膿疱性毛包炎(eosinophilic pustular folliculitis: EPF)と診断し,インドメタシンの内服および外用療法により良好な経過を得た。調べ得た限り臍帯血移植後に EPF を発症した報告はない。臍帯血移植後に顔面にそう痒の強い膿疱や丘疹をみた場合,EPF も鑑別すべき重要な疾患と考えた。(皮膚の科学,15: 254-258, 2016)
  • 李 民, 東 直行
    2016 年 15 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    70歳代,女性。2012年6月健診で胸部異常陰影を指摘され,胸腺腫(MASAOKA III期)と診断された。2013年6月より皮疹が出現し,徐々に全身に拡大。同年10月当科初診時,全身に鱗屑を伴う紅斑が多発・融合し,ほぼ紅皮症状態を呈していた。皮膚生検にて表皮内の個細胞壊死,リンパ球浸潤,表皮真皮境界部の液状変性が認められた。肝機能障害もあわせ,胸腺腫に関連した graft-versus-host like disease と診断した。手術は施行せず,ステロイド外用などで経過観察していたが,同年11月下旬,肺炎で永眠した。胸腺腫に皮膚症状が出現した場合,本疾患を念頭に置く必要があると思われる。本疾患は重篤な感染症で死亡する症例が多く,皮膚症状,特に紅皮症出現後の予後は極めて不良である。(皮膚の科学,15: 259-264, 2016)
  • 岩田 昌史, 川端 紀子, 平居 昭紀, 星 参
    2016 年 15 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    40歳代,男性。初診1ヶ月前から前胸部に紅色結節が多発し,1週間前から両側耳前部が腫脹してきた。MRI 画像で耳下腺と涙腺の腫脹があり,前胸部の紅色結節と耳下腺の病理組織像に非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫を認めたことからサルコイドーシスと診断した。ステロイド外用で経過観察していたが,初診1ヶ月後から右頬部三叉神経第2枝領域のしびれと表在感覚鈍麻が出現した。プレドニゾロン 30mg/日,ミノサイクリン 100mg/日の内服治療で,耳下腺腫脹は1週間,右頬部のしびれは3週間程度で改善し,画像検査で涙腺腫脹も改善がみられた。サルコイドーシスによる神経症状の発症機序は複数あるが,自験例では解剖学的位置関係と臨床経過から眼窩部涙腺腫脹による眼窩内圧上昇,頬骨神経圧迫が三叉神経症状の誘因と考えられた。耳下腺腫脹,脳神経麻痺を合併するサルコイドーシスは治療介入が必要となることが多く,症状を見落とさないことが重要である。(皮膚の科学,15: 265-269, 2016)
  • 佐藤 由似, 伊藤 雄太, 濱田 裕子, 片山 恵子, 宇野 裕和, 中田 土起丈
    2016 年 15 巻 4 号 p. 270-273
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    80歳代,男性。3日前に近医内科で肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス® NP)を接種された。2日前に接種部位に疼痛,遅れて発赤が出現した。左上腕伸側に軽度の局所熱感を伴う 85×52mm の浸潤を触れ,表面が浮腫性の紅斑が存在し,内部には 26×18mm の紫斑を伴っていた。特異的なのは自覚症状・他覚所見に比して血液検査で炎症反応が高値を呈した点であった(CRP 4.51mg/dl)。ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩軟膏の外用により,疼痛は2日で消失し,周囲の紅斑も徐々に縮小した。しかし,初診から11日後に紫斑周囲に血痂を認め,18日後には中央に黒色痂皮を伴う潰瘍を形成した。外用薬をスルファジアジン銀クリームに変更したところ,潰瘍は徐々に縮小,初診17週後に瘢痕治癒した。発症機序は不明だが,認められた皮疹と経過から病態は真皮から皮下脂肪織に蜂窩織炎とは異なる機序で生じた炎症反応と推察した。肺炎球菌ワクチン接種者数は増加していくことが予想されるため,今後注意を払う必要がある副反応と考えた。(皮膚の科学,15: 270-273, 2016)
  • 佐藤 由似, 保坂 浩臣, 伊藤 雄太, 濱田 裕子, 片山 恵子, 宇野 裕和, 中田 土起丈
    2016 年 15 巻 4 号 p. 274-277
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    症例1:40歳代,女性。6日前に左手第2指を飼いネコに咬まれ,発赤・腫脹が出現した。翌日近医でセフカペンピボキシル塩酸塩を処方されたが,増悪したため5日後に当科を紹介された。近医での一般細菌培養検査結果は Pasteurella sp.(1+),Bacillus cereus(1+)であったため,両菌に対して感受性を有していたレボフロキサシンを16日間投与した。その後一時軽快したが,2週後に発赤部に波動を触知し,咬傷部に過剰肉芽を伴う潰瘍が出現した。MRI 所見から化膿性関節炎,急性骨髄炎と診断し,緊急デブリドマン,創外固定術が施行された。症例2:70歳代,女性。右手第2指をボランティアで世話をしているネコに咬まれた。近医で処方されたファロペネムナトリウム水和物で一時軽快したが,3日後に発赤・腫脹が再燃したため当科を紹介された。症例3:40歳代,女性。右手関節部,左手第2指を飼いネコに咬まれた後に発赤・腫脹が出現したため,翌日当科を受診した。病変部の細菌培養結果は Pasteurella multocida(2+)であった。症例2,3はいずれもアンピシリン投与により短期間で軽快した。ネコの歯はイヌに比して細く尖っているため,創口が小さく閉創しやすい。このために嫌気的環境を形成し,深部での感染がおこりやすいと考えられる。ネコ咬傷患者の診療に対しては,こうした危険を常に念頭に置き,増悪時には直ちに受診するように説明する必要があると考えた。(皮膚の科学,15: 274-277, 2016)
治験論文
  • 宮地 良樹, Mizzi Fabienne, 三田 哲也, 白 立岩, 生駒 晃彦
    2016 年 15 巻 4 号 p. 278-293
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    目的:本治験は,各単剤と比べたアダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルの有効性および安全性・忍容性を,日本人尋常性ざ瘡患者を対象に12週間の治療において検討することを目的として施行された。
    方法:本治験は,多施設共同,無作為化,二重盲検,実薬対照,並行群間比較の第III相臨床試験で,計417例の被験者が参加し,治験薬は12週間,1日1回,顔面全体に塗布された。総皮疹数の最終来院日の減少率を有効性主要評価項目とした。安全性・忍容性は有害事象や局所刺激性評価などの指標を用いて評価した。
    結果:本配合ゲルの総皮疹数に対する有効性は高かった(減少率の中央値:82.7%)。単剤に対する優越性は,アダパレン0.1%ゲル(68.6%)に対しては統計学的に有意(p<0.001)であった一方,過酸化ベンゾイル2.5%ゲル(81.6%)に対しては有意でなかった。重症や重篤な有害事象は報告されなかった。局所刺激症状を経験した被験者の割合は,配合ゲルがアダパレン0.1%ゲルや過酸化ベンゾイル2.5%ゲルよりも多かったが,いずれの群でもその症状はほとんどが軽症か中等症であった。
    結論:本治験により,本配合ゲルの日本人尋常性ざ瘡患者における高い有効性と安全性・忍容性が明らかになった。この結果はこれまでの海外データに矛盾せず,本配合ゲルの尋常性ざ瘡治療における良好なリスク・ベネフィット比を支持するものである。(皮膚の科学,15: 278-293, 2016)
  • 宮地 良樹, Mizzi Fabienne, 三田 哲也, 白 立岩, 生駒 晃彦
    2016 年 15 巻 4 号 p. 294-307
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/06
    ジャーナル 認証あり
    目的:本治験は,アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルを日本人尋常性ざ瘡患者に12ヶ月間の長期投与をした場合における安全性と有効性を検討することを目的として施行された。
    方法:多施設共同,非盲検,非比較,長期投与第III相臨床試験で,治験薬は12ヶ月間,1日1回,計436例の被験者の顔面全体に塗布された。安全性は有害事象や局所刺激性評価などの指標を用いて評価した。有効性は皮疹数の12ヶ月目の減少率によって評価した。
    結果:計47件の治験薬と関連のある有害事象が43例(9.9%)の被験者において報告され,このうち9例が治験を中止した。治験薬と関連のある有害事象の発生頻度は第1期(投与開始後90日以内)が最も高かった。治験薬と関連のある有害事象の大半は皮膚関連で,そのうち皮膚刺激が最も多かった。皮膚刺激の発生頻度は第一期で5.5%であった。局所刺激の徴候・症状の程度は,ほとんどが軽症か中等症で,重症であった被験者は極少数であった。有効性に関しては,12ヶ月目のベースラインと比べた皮疹数の減少率は,総皮疹数,炎症性皮疹数,非炎症性皮疹数のいずれにおいても85%を超えていた。
    結論:本試験により,日本人尋常性ざ瘡患者におけるアダパレン0.1%と過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルの長期投与の高い有効性と安全性が示された。(皮膚の科学,15: 294-307, 2016)
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