皮膚の科学
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
(1)Bowen 病の自然消退
臨床像をよく観察すると理解を深めることができる
村田 洋三
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2017 年 16 巻 3 号 p. 169-175

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抄録

悪性黒色腫やメルケル細胞癌での腫瘍の自然消退はよく知られている。しかし,Bowen 病での自然消退はあまり知られておらず,見逃されている。一見正常に見える皮膚をはさんで,複数の Bowen 病病巣が近接する症例では,この「正常」皮膚の病理組織を正しく評価すれば,アミロイド沈着などの消退現象の証拠を見ることができる。あるいは,通常の形状の Bowen 病でも,部分生検の部分から消退現象が発生・進行していくのを,経時的に直視できることもある。時には Bowen 病が完全に消退することもある。これらの消退現象は,特殊な症例での稀な出来事ではない。Bowen 病の病理生態においては,一つの病巣の中で,腫瘍の増殖と消退,progression と regression とが鎬を削っているのだ。そのせめぎあいの結果がその時点での臨床像に反映されている。このことを把握して,臨床像を見直せば,Bowen 病という比較的ありふれた皮膚腫瘍への理解が深まり,臨床・病理への興味も増すだろう。初診の時点で,それまでの経時的変化を読み取り,今後の動きを予想するのは,皮膚科臨床の醍醐味である。(皮膚の科学,16: 169-175, 2017)

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© 2017 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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