皮膚の科学
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16 巻, 3 号
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
  • 臨床像をよく観察すると理解を深めることができる
    村田 洋三
    2017 年 16 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/18
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫やメルケル細胞癌での腫瘍の自然消退はよく知られている。しかし,Bowen 病での自然消退はあまり知られておらず,見逃されている。一見正常に見える皮膚をはさんで,複数の Bowen 病病巣が近接する症例では,この「正常」皮膚の病理組織を正しく評価すれば,アミロイド沈着などの消退現象の証拠を見ることができる。あるいは,通常の形状の Bowen 病でも,部分生検の部分から消退現象が発生・進行していくのを,経時的に直視できることもある。時には Bowen 病が完全に消退することもある。これらの消退現象は,特殊な症例での稀な出来事ではない。Bowen 病の病理生態においては,一つの病巣の中で,腫瘍の増殖と消退,progression と regression とが鎬を削っているのだ。そのせめぎあいの結果がその時点での臨床像に反映されている。このことを把握して,臨床像を見直せば,Bowen 病という比較的ありふれた皮膚腫瘍への理解が深まり,臨床・病理への興味も増すだろう。初診の時点で,それまでの経時的変化を読み取り,今後の動きを予想するのは,皮膚科臨床の醍醐味である。(皮膚の科学,16: 169-175, 2017)
研究
  • 中川 浩一
    2017 年 16 巻 3 号 p. 176-185
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    富田林病院では2005年11月から2016年12月までに134回の皮膚がん検診を行った。検診は毎月第3水曜日とし,1日16人までの予約制で行なった。総受診者数は1,384名で男性487名(35.2%),女性897名(64.8%)であった。平均年齢は52.3歳で,性別では男性が54.3歳,女性が51.3歳で,女性の方が若干若い傾向にあった。検診結果は以下の3段階で判定した。1)皮膚がんの可能性は極めて低いと思います。時々,大きさや色の変化を観察してください,2)皮膚がんの可能性があります。皮膚科専門医を受診して,検査を受けることをお勧めします,3)すでに,皮膚がんもしくは前がん状態になっていると思います。そして,この結果を記載した報告書を手渡し,一部の受診者には経過が見やすいように病変の写真も貼付した。2)の判定者の一部は当院で生検を受け,24名が皮膚がんであった。3)と併せて34名の皮膚がん患者が抽出された(34/1,384;2.46%)。がんの種類は光線角化症;18例,基底細胞癌;13例,ボーエン病;1例,悪性黒色腫;1例,菌状息肉症;1例であった。本邦においては当科以外にも和歌山県や大分県で同様の皮膚がん検診が行われており,その方法や結果と比較検討した。皮膚がん検診は他のがん検診に比較して,低コストでがん発見率の高いことが示唆され,海外のような大規模な皮膚がん検診が本邦でも行われることが望まれた。(皮膚の科学,16: 176-185, 2017)
症例
  • 五木田 麻里, 山田 陽三, 葉 乃彰, 藤田 博己, 夏秋 優
    2017 年 16 巻 3 号 p. 186-190
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    60歳代,女性。発症の20日前に淡路島北部にて墓掃除,発症の10日前に六甲山南側の山麓部にて木の剪定作業を行った。8月中旬より発熱,全身の皮疹が出現したため,当科を受診した。初診時,体幹,四肢を中心に淡い紅斑が多発し,手掌や足底にも紅斑を認めた。また,下腹部に2ヶ所の刺し口を認めた。検査所見では白血球増加,血小板低下,CRP 高値,肝障害,CK 上昇を認め,ペア血清による Rickettsia japonica 抗体価の有意な上昇を認めたことより日本紅斑熱と診断した。ミノサイクリンの投与により皮疹は軽快したが,経過中に後頸部痛と四肢運動感覚障害が出現し,精査の結果,無菌性髄膜炎,多発単神経炎と診断した。その後,アジスロマイシンとシプロフロキサシンの投与でこれらの神経症状は軽快した。日本紅斑熱に神経障害を合併した例は自験例以外に5例報告があり,全例無菌性髄膜炎を認めたが多発単神経炎の合併は自験例のみであった。(皮膚の科学,16: 186-190, 2017)
  • 松田 智子, 神戸 直智, 磯貝 理恵子, 山田 秀和, 岡本 祐之
    2017 年 16 巻 3 号 p. 191-194
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    3歳,女児。アトピー性皮膚炎の加療歴あり。1歳頃より出現した両下肢の皮疹はそう痒を伴わず,ステロイド剤外用への反応がなかったため,近畿大学奈良病院にて生検を施行された。病理組織診で類上皮細胞肉芽腫を認め,関西医科大学皮膚科を紹介された。受診時,両足の外側縁に半米粒大の苔癬状丘疹が残るのみで皮疹は消退していたが,手背・足背に自覚症状がない嚢腫状の腫脹を認め,手指は近位に向かって腫脹していた。MRI 検査で腱鞘周囲に浮腫を認め,炎症の存在が示唆された。この時点では眼症状は見られなかったが,特徴的な臨床像からブラウ症候群を疑い,NOD2 遺伝子の変異を検討したところ,ブラウ症候群において最も頻度の高い変異である R334W 変異が確認された。ブラウ症候群は治療介入が遅れると関節拘縮や失明をきたす。本症に見られる皮疹は自覚症状を伴わず見逃されることも多いが,他臓器病変に比べて生検がしやすく,肉芽腫の確認により診断の契機になる点で,皮膚科医の果たす役割が重要と考える。(皮膚の科学,16: 191-194, 2017)
  • 鷲見 真由子, 小谷 晋平, 小坂 博志, 小川 真希子, 長野 徹, 進藤 達哉, 亀井 博紀
    2017 年 16 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    30歳代,男性。同性愛者。ニューモシスチス肺炎発症を契機に AIDS と診断されている。4ヶ月前より両側足底に硬結,圧痛を伴う境界明瞭な母指頭大までの暗紅色班が散在性に認められ,増数してきた。皮膚生検では真皮内に結節状に短紡錘形細胞が密に増生し,スリット状の管腔が混在している所見を認めた。免疫組織染色では,異型細胞は CD31,CD34,Factor VIII,D2-40,HHV-8 がび漫性に陽性であった。臨床所見と併せて AIDS 関連 Kaposi 肉腫と診断し抗 HIV 療法(antiretroviral therapy: ART)を開始し略治した。最近内臓病変を伴わず皮膚のみに病変を認める AIDS 関連 Kaposi 肉腫では抗がん剤を使用せず,細胞免疫を賦活する ART のみで経過をみることが標準とされている。本邦における AIDS 患者は増加しており,Kaposi 肉腫に遭遇する機会の多い皮膚科医も本疾患の治療に通暁しておく必要がある。(皮膚の科学,16: 195-200, 2017)
  • 西川 美都子, 小川 浩平, 宮川 史, 浅田 秀夫
    2017 年 16 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    症例は,8ヶ月,男児。早産(在胎33週3日)かつ低出生体重(出生体重 1,838g)であった。BCG 接種の約10日後から針痕に一致して紅色丘疹が出現し,約3週間後から全身に紅色丘疹が多発するようになった。左腋窩リンパ節腫脹を伴ったが,全身状態は良好で血液生化学検査および胸部単純X線で異常所見はなかった。紅色丘疹の病理組織では真皮浅層に CD68 陽性の組織球の集簇がみられた。皮疹部からは結核菌や非結核性抗酸菌が検出されず,丘疹状結核疹と診断した。経過観察のみで,皮疹出現から約3ヶ月後には軽度の瘢痕をのこして軽快した。早産や低出生体重と,BCG 接種の副反応との関連については明らかになっておらず,今後,検討が必要かもしれない。(皮膚の科学,16: 201-204, 2017)
  • 小林 佑佳, 小澤 健太郎, 久米 典子, 爲政 大幾
    2017 年 16 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳代,男性。幼少期より両下肢に多数の小結節を自覚していた。徐々に増加し,圧痛を伴ってくるようになったが,放置していた。その後,一部の結節が増大してきたため,41歳時に前医を受診し,臨床所見と生検病理組織像で多発性皮膚平滑筋腫と診断された。全身麻酔下に下腿と大腿の結節を広範囲に切除され,メッシュ植皮と戻しメッシュ植皮で修復された。その後追加切除の希望なく,ニフェジピンの内服によって疼痛をコントロールされていた。最近になって一部の結節の増大と疼痛の増強を認めるようになったため,当院にて全身麻酔下に大腿部の多発性結節と右腰部や下腿の孤在性結節の切除を行なった。大腿部の一部の腫瘍切除部では分層植皮を行い,残りの部分は皮弁として拳上し,真皮側に露出した結節を真皮側から切削した後に皮弁を元に戻し縫合することにより,一括皮下剥離術を施行した。右腰と下腿の結節は切除後に単純縫縮した。術後経過は良好で,術後半年経過するも結節の再発は認めていない。多発性皮膚平滑筋腫は稀な疾患であるが,多発し痛みを伴うことから治療に難渋することが多い。(皮膚の科学,16: 205-209, 2017)
  • 花岡 佑真, 種村 篤, 須磨 朱里, 田中 文, 壽 順久, 片山 一朗
    2017 年 16 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    2014年7月に免疫チェックポイント阻害薬である抗 PD-1 抗体が,根治切除不能な悪性黒色腫に対する治療薬として,世界に先立ち日本で初めて承認された。それを契機に,抗 CTLA-4 抗体や BRAF 阻害剤なども国内承認された。海外では CheckMate067 という大規模試験が行われ,未治療の進行期悪性黒色腫患者に対し,奏効率は抗 PD-1 抗体群で43.7%,抗 CTLA-4 抗体群で19.0%,併用群で57.6%であったと報告されている。現状では抗 PD-1 抗体は BRAF 遺伝子変異の有無にかかわらず,悪性黒色腫に対する第一選択薬の1つとなっている。当科では2014年9月から2016年9月までの期間に抗 PD-1 抗体を悪性黒色腫患者18例に投与している。奏効率は22.2%(4/18)であり,SD も含めた疾患制御率は55.5%(10/18)であった。奏効例では白斑が有意に多く出現した。奏効例の組織学的検討では,抗 PD-1 抗体投与前に腫瘍辺縁に PD-1 陽性 CD8 陽性T細胞が浸潤していた。抗 PD-1 抗体はニボルマブに加え,ペンブロリズマブも国内で承認され,癌腫も悪性黒色腫以外に,非小細胞肺癌,腎細胞癌と順次適応を拡大している。一方で,奏効メカニズムの詳細な解明と治療応答・不応性を反映するバイオマーカーの同定などこれから明らかにすべき課題も多い。(皮膚の科学,16: 210-215, 2017)
  • 高野 紘子, 金田 一真, 穀内 康人, 谷崎 英昭, 黒川 晃夫, 森脇 真一
    2017 年 16 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル 認証あり
    4歳,女児。初診の2ヶ月前より両側第2,3指 PIP 関節部の腫脹を自覚した。患児には,同指で母の下着の肩紐を引っ掛ける習癖がみられた。初診時,両側第2,3指 PIP 関節部の橈側および尺側が腫脹していたが,疼痛や関節可動域の制限はみられなかった。血液検査では,MMP-3 が高値であったが,炎症反応は正常で,抗核抗体およびリウマチ因子は陰性であった。腫脹部の単純レントゲン検査では,軟部組織の腫脹を呈していたが,骨病変はみられなかった。腫脹部皮膚は病理組織学的に,軽度の表皮肥厚,真皮での線維束の膨化や配列の乱れ,弾性線維の減少ならびに断裂が認められた。以上より,自験例を pachydermodactyly と診断した。本症の病因は不明であるが,手指における微小な外傷や機械的刺激の反復,何らかの遺伝的素因,アンドロゲンや成長ホルモンなどによる線維化が関わって発症すると想定されている。自験例では,下着の肩紐による機械的刺激が本症の主な発生誘因と考えられた。(皮膚の科学,16: 216-220, 2017)
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