抄録
3歳,女児。アトピー性皮膚炎の加療歴あり。1歳頃より出現した両下肢の皮疹はそう痒を伴わず,ステロイド剤外用への反応がなかったため,近畿大学奈良病院にて生検を施行された。病理組織診で類上皮細胞肉芽腫を認め,関西医科大学皮膚科を紹介された。受診時,両足の外側縁に半米粒大の苔癬状丘疹が残るのみで皮疹は消退していたが,手背・足背に自覚症状がない嚢腫状の腫脹を認め,手指は近位に向かって腫脹していた。MRI 検査で腱鞘周囲に浮腫を認め,炎症の存在が示唆された。この時点では眼症状は見られなかったが,特徴的な臨床像からブラウ症候群を疑い,NOD2 遺伝子の変異を検討したところ,ブラウ症候群において最も頻度の高い変異である R334W 変異が確認された。ブラウ症候群は治療介入が遅れると関節拘縮や失明をきたす。本症に見られる皮疹は自覚症状を伴わず見逃されることも多いが,他臓器病変に比べて生検がしやすく,肉芽腫の確認により診断の契機になる点で,皮膚科医の果たす役割が重要と考える。(皮膚の科学,16: 191-194, 2017)