抄録
症例は50歳代,男性。幼少期より両下肢に多数の小結節を自覚していた。徐々に増加し,圧痛を伴ってくるようになったが,放置していた。その後,一部の結節が増大してきたため,41歳時に前医を受診し,臨床所見と生検病理組織像で多発性皮膚平滑筋腫と診断された。全身麻酔下に下腿と大腿の結節を広範囲に切除され,メッシュ植皮と戻しメッシュ植皮で修復された。その後追加切除の希望なく,ニフェジピンの内服によって疼痛をコントロールされていた。最近になって一部の結節の増大と疼痛の増強を認めるようになったため,当院にて全身麻酔下に大腿部の多発性結節と右腰部や下腿の孤在性結節の切除を行なった。大腿部の一部の腫瘍切除部では分層植皮を行い,残りの部分は皮弁として拳上し,真皮側に露出した結節を真皮側から切削した後に皮弁を元に戻し縫合することにより,一括皮下剥離術を施行した。右腰と下腿の結節は切除後に単純縫縮した。術後経過は良好で,術後半年経過するも結節の再発は認めていない。多発性皮膚平滑筋腫は稀な疾患であるが,多発し痛みを伴うことから治療に難渋することが多い。(皮膚の科学,16: 205-209, 2017)