2018 年 17 巻 6 号 p. 299-312
乳房外 Paget 病において臨床・病理相関を議論することは,通常ない。しかし,これを考えることによって,乳房外 Paget 病の臨床像をより深く理解することになるだろう。紅斑では,「臨床的紅斑の境界」と「組織学的炎症像の境界」とが一致する。そして後者は,「組織学的腫瘍境界」とも一致する。その結果,「臨床的紅斑の境界」と「組織学的腫瘍境界」とが一致する。同じ三段論法が,乳房外 Paget 病の白斑についても成立する。 この単純な事実が,現在見えなくなっている。その結果,mapping 生検という苦行を患者に強いる施設が本邦で増加している。紅斑と白斑との重層的関係,白斑部の melanocyte の挙動,色素沈着部の melanocyte と Paget 細胞との特異な関係について述べる。また,孤立性に存在するとされるPaget 細胞は,実は細胞突起で繋がりあっている可能性を示した。 (皮膚の科学,17 : 299-312, 2018)