皮膚の科学
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症例
ヒトヒフバエによる皮膚蠅症の 1 例
小嶌 綾子辰巳 和奈夏秋 優大日 輝記椛島 健治
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2018 年 17 巻 6 号 p. 313-316

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抄録

10歳代後半,男性。約 1 ヶ月間,中南米ベリーズ国のプレイセンシアへ渡航し,森林や海で蚊などによく刺された。帰国 4 日前より左側胸部に痒みを伴う皮疹を認め,その後も腫脹が持続した。 2 週間後の数日間,皮疹部に激痛があり,皮疹中央部に瘻孔が出現し,浸出液を認めた。皮疹の出現から約 5 週間後,浸出液の増加があり周囲を圧迫したところ瘻孔から虫が排出され,翌日当科を受診した。持参した虫体をヒトヒフバエと同定し,自験例を皮膚蠅症と診断した。幼虫は形態や大きさから 2 齢幼虫の可能性が高いものと推定した。ヒトヒフバエは中南米に限局して棲息する昆虫で,哺乳動物の皮膚に寄生して成長し一定期間を経て自然に排出され創は治癒するが,寄生している時期は痛みを伴うため一般的な治療法として,圧出,外科的な摘出,または現地でよく行われることとして呼吸のための孔を塞ぎ虫を誘い出す方法などがある。今後,海外旅行の機会の増加や渡航先の多様化はさらに加速すると考えられる。難治性の様結節をみた際には本症の可能性も念頭において,海外渡航歴についての問診を行うことも重要と考える。 (皮膚の科学,17 : 313-316, 2018)

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© 2018 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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