皮膚の科学
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
(8) 発 想 の 転 換 ―皮膚付属器の発生学を再考する―
村田 洋三
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2019 年 18 巻 2 号 p. 59-70

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抄録

皮膚付属器(毛包,脂腺,汗腺,爪)の発生は,いずれも「皮膚外胚葉から深部に向かって downgrowth する」と考えられている(down-growth 理論)。表皮の位置を固定した視点からなら,その通りである。しかし,視点を変え,「それぞれの付属器の最深部を取り残したまま,皮膚が肥厚する」と考えることもできる(stay-in 理論)。この 2 つの考え方は,単に「一つの現象を違う見方で見ている」だけの「相対的な差異」に過ぎないのだろうか? 方向の一貫性,エネルギーの無駄,真皮の破壊,間葉細胞塊との連動,分化と増殖の関係,アポクリン腺の発生,脂腺の発生,立毛筋の発生,perifollicular sheath の形成,真皮と脂肪組織の境界面,の10項目について 2 つの視点を比較した。 その結果,stay-in 理論の方が,10項目をよりよく説明できると思われた。日常診療に影響する問題ではないが,皮膚附属器の発生を考えることは,皮膚科医にとって無駄ではないと考える。 (皮膚の科学,18: 59-70, 2019)

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© 2019 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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