2019 年 18 巻 2 号 p. 71-78
20歳代,男性。初診 2 週間前,右前胸部に自覚症状を欠く腫瘤に気が付いた。初診時,右胸鎖関節部に直径 3cm大の皮下腫瘤を認めた。病理組織学的所見では,嚢腫壁はおもに重層扁平上皮で構成されていたが,多列線毛上皮,杯細胞も観察された。嚢腫周囲に軟骨,気管支腺,平滑筋,リンパ濾胞は認めなかった。年齢,発生部位,経過,病理組織学的所見から,本症例を皮膚気管支原性嚢胞と診断した。海外および本邦における皮膚気管支原性嚢胞の報告107例について臨床所見と病理組織所見を検討した。集計の結果,自験例と同様に,側頸嚢胞に類似した病理組織所見を示す症例も存在した。皮膚気管支原性嚢胞と側頸嚢胞の鑑別は時に困難であり,診断には臨床所見と病理組織所見を含めた総合的な判断が必要であると考えた。 (皮膚の科学,18 : 71-78, 2019)