2019 年 18 巻 6 号 p. 344-348
59歳,女性。初診の約 7 ヶ月前より,頸部や両手掌に紅斑と小水疱が出現した。その後も水疱の新生が続くため当科を紹介受診した。当科初診時,頬粘膜や体幹・四肢に緊満性水疱を認めた。病理組織学的所見では,表皮下水疱と真皮浅層に軽度のリンパ球浸潤を認めた。蛍光抗体直接法では表皮基底膜部に IgG と C3 が線状に沈着し,1M 食塩水剥離皮膚を基質とした蛍光抗体間接法では IgG 抗体が真皮側に反応,Ⅶ型コラーゲンリコンビナント蛋白の IgG enzyme-linked immunosorbent assay が陽性であったため,後天性表皮水疱症(epidermolysis bullosa acquisita)と診断した。プレドニゾロン 15 mg(0.3 mg/kg)/日の内服にて皮疹はコントロール良好であった。またⅣ型コラーゲンの免疫染色は,水疱の真皮側に染色されており,本症例では炎症によって lamina lucida で剥離していると考えた。 (皮膚の科学,18 : 344-348, 2019)