2003 年 2 巻 Suppl.3 号 p. A44-A48
アトピー性皮膚炎患者の増加および本症に対する標準治療に抵抗性の成人難治性患者の増加に伴い,漢方療法をはじめとする東洋医学的治療に対する患者側からの需要が高まっている。それに伴い,本症に対する漢方療法の臨床効果に対する科学的・客観的評価,すなわちEBMによる評価が重要と考えられる。評価対象として採用した20例の臨床試験報告の多くは症例集積研究で,大規模なランダム化同時対照比較試験は少数であった。アトピー性皮膚炎に対する漢方療法の有効性に関する試験が未だ不十分であること,およびエビデンスのレベルが高い試験が少数であることは否定できないと思われた。疾病を主に個体全体の失調の側面から診る漢方療法の特殊性および適当な同時対照を用いた試験の困難性を考慮すると,その臨床効果の評価には漢方療法独自の新しい評価法を導入する必要性があると考えられる。