皮膚の科学
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症例
肺小細胞癌の皮膚転移の 1 例
津田 真里谷村 裕嗣四十万谷 貴子長野 奈央子中丸 聖槇村 馨清水 俊樹清原 隆宏
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2021 年 20 巻 1 号 p. 24-29

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抄録

77歳,女性。 1 ヶ月前より腹部に皮下結節が出現し,近医で胸腹部 CT にて肺・肝臓に多発する腫瘍を指摘された。当院呼吸器膠原病内科で原発不明癌の皮膚転移が疑われ,原発巣検索の目的で当科を紹介された。当科初診時,心窩部および右下腹部にそれぞれ 1 個ずつ,約 25 mm 大の皮下結節がみられた。胸部,側腹部には多数の小指頭大皮下結節を認めた。右下腹部の皮膚生検で,境界比較的明瞭,不規則形の皮下結節を認め,類円形∼卵円形のクロマチンに富んだ核とわずかな細胞質を有する腫瘍細胞が増殖していた。核は大小不同で異型性を有し,N/C 比は高い。多数の核分裂像を認めた。一部ではインディアン・ファイル状配列がみられた。腫瘍細胞は,CK7 陽性,CK20 陰性,CD56 陽性,synaptophysin 陽性,chromogranin A 陽性,thyroid transcription factor-1(以 下TTF-1)陽性であった。PET/CT では皮下,肝内,左肺上葉,左肺門,縦隔および両側腋窩リンパ節,左副腎に FDG 異常集積を認めた。以上より,肺小細胞癌の皮膚転移と診断した。近年,各種転写因子がさまざまな内臓癌の特異的マーカーとして注目されてきており,自験例でも TTF-1 陽性により肺小細胞癌の診断が可能となった。皮膚生検により原発不明癌における原発臓器同定が可能となり,治療方針の決定にも有用であると考えられる。 (皮膚の科学,20 : 24-29, 2021)

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© 2021 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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