2021 年 20 巻 2 号 p. 134-140
80歳,女性。放射線・砒素の曝露歴なし。初診の10年以上前から両腋窩と右上腕外側の計 4 ヶ所の黒色病変に気づいていた。初診の 9 ヶ月前より一部に出血を伴うようになったため,前医皮膚科を受診したところ 4 ヶ所の生検組織はすべて基底細胞癌(BasalCellCarcinoma:以下 BCC)の診断であった。当科紹介受診となり 4 ヶ所の腫瘍すべて,辺縁から 3mm離して単純切除術を行った。術後 9 ヶ月が経過した再診時,左腋窩に新たに 2×10 mm 大の線状の茶褐色斑がみられたため全切除したところ,病理組織像は基底細胞癌であった。当科で1991年から2020年までの間に BCC と診断された症例は358症例であり,そのうち腋窩 BCC は自験例を含めて 9 例であった。両腋窩の多発型 BCC 症例は非常に稀なものと考え報告した。 (皮膚の科学,20 : 134-140, 2021)