2021 年 20 巻 3 号 p. 179-186
78歳,男性。非小細胞性肺癌,胸膜播種に対し,化学療法を施行。当初部分奏功であったがその後病勢進行となり,2nd line で PD-L1 抗体のアテゾリズマブが開始された。 7 回目前後から躯幹中心に瘙痒を伴う浮腫性紅斑が出現。その後,眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑,手関節背面の扁平隆起性丘疹などが出現した。筋原性酵素の上昇,近位筋優位の筋力低下,抗 TIF1-γ 抗体陽性も伴ったことから皮膚筋炎と診断し,アテゾリズマブを中止し,ステロイド全身投与を行った。一度は寛解に至るも,その後の肺癌の進行とともに症状が再燃し,コントロール不良のまま原病により永眠された。近年,免疫チェックポイント阻害剤の使用増加に伴い免疫関連有害事象が注目されている。報告数は少ないが,自験例も免疫関連有害事象としての皮膚筋炎の可能性を考えたが,腫瘍随伴皮膚筋炎との鑑別が困難であった。今後の病態解明のためにも同様の症例の集積が待たれる。 (皮膚の科学,20 : 179-186, 2021)