2021 年 20 巻 4 号 p. 343-348
57歳男性。既往歴 : 浸潤性胸腺腫,重症筋無力症。初診 3 ヶ月前より四肢の筋力低下,全身倦怠感,味覚障害が出現し,当院神経内科に入院となった。初診時,顔面,体幹,四肢に鱗屑を伴う角化性紅斑がびまん性にみられ,紅皮症を呈していた。病理組織像では,錯角化を伴う過角化,表皮基底層の液状変性,表皮内個細胞壊死およびリンパ球浸潤を認め,graft-versus-host disease(GVHD)like erythroderma を呈した thymoma-associated multiorgan autoimmunity(TAMA)と診断した。 低 γ グロブリン血症を呈し,緑膿菌性肺炎を繰り返すことから Good 症候群を併発していると考えられた。ステロイドパルス療法,抗菌薬投与および γ グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin : IVIG)施行後,全身状態は一時的に回復したが,その後播種性 Mycobacterium abscessus 感染症を併発し,初診10ヶ月後に永眠した。TAMA は GVHD 様皮膚症状,肝障害,腸炎を発症する疾患であり,しばしば低 γ グロブリン血症や Good 症候群を併発する。胸腺腫患者にGVHD-like erythroderma が出現した場合,致死的で極めて予後不良の重篤な感染症,特に日和見感染の発症に十分留意する必要がある。 (皮膚の科学,20 : 343-348, 2021)