皮膚の科学
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20 巻, 4 号
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
  • 村田 洋三
    2021 年 20 巻 4 号 p. 273-292
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
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    電子付録

    皮膚科学において重要な Blaschko 線の原著に遭遇した。その紹介は我々日本人皮膚科医にも有益であるが,全編ドイツ語で書かれており,一般には読破困難である。そこで,英語,日本語へ 2 段階の翻訳を行った。それでも,全文の読破・把握は尚,困難と思われるため,抄訳を作成し,ここに提示した。 単なる懐古趣味として読むのではなく,我々皮膚科医が日常的に用いている Blaschko 線を,よりよく理解できるという意義がある。また,その問題点を指摘し,改善していくことも提唱する。 (皮膚の科学,20 : 273-292, 2021)

症例
  • 吉村 亜紀 , 近藤 由佳理 , 東 典子 , 吉良 正浩 , 小島 啓尚
    2021 年 20 巻 4 号 p. 293-298
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    51歳,男性。数十年来アトピー性皮膚炎(AD)として加療されていた。視力低下を自覚し当院眼科受診,網膜色素線条を認め,弾性線維性仮性黄色腫(PXE)が疑われ当科紹介となった。頸部,腋窩の皮膚は粗造で AD 様皮疹を認めるも,PXE に特徴的な黄白色丘疹は確認できなかった。頸部より皮膚生検を施行,真皮内に変性した弾性線維と石灰化を認め,PXE と診断した。特異 IgE 検査でハウスダスト,ヤケヒョウヒダニ共にクラス 3 ,また長年再燃を繰り返す湿疹性病変を認め,背景には AD 合併があると考えた。しかし生検した頸部の AD 様皮疹からは,湿疹性変化や長期罹患したAD 患者に認める頸部さざ波状変化に特徴的な組織学的変化を認めなかった。また同部位のダーモスコピーでは黄褐色斑の散見を認め,肉眼的に PXE に特徴的な黄色丘疹は認めないもののこれらはPXE の非典型的皮疹である可能性が考えられた。PXE AD を合併した例は自験例以外に 1 例報告があるが,病態について詳細な記載はなく,AD PXE に関連した皮疹の関連については不明な点が多い。PXE の診断が遅れる原因として認知度が低いこと,自覚症状が乏しいこと,好発部位が間擦部のため AD といった炎症性皮膚疾患との鑑別が問題になること,非典型的皮疹の場合は視診での診断が困難であることなどが考えられる。我々皮膚科医は積極的に組織検査を行い,早期診断に努めることが推奨される。 (皮膚の科学,20 : 293-298, 2021)

  • 宮本 翔子 , 南 祥一郎 , 仁田 有次郎, 井上 愛 , 伊比井 崇向 , 木村 勇人, 寺田 信 , 藤本 真由 , 樽谷 勝仁
    2021 年 20 巻 4 号 p. 299-308
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    62歳,女性。 6 年前に自覚した心窩部左側の皮疹に対する精査目的で当科を紹介された。初診時,心窩部左側に橙黄色から紅色の丘疹が集簇・融合し,光沢を伴う弾性やや硬の局面を形成していた。 また, 2 年前から外陰部左側に常色から淡紅色で一部に皺を伴う弾性軟の結節を認めていた。両者は病理組織学的に免疫グロブリン軽鎖(κ 型)由来のアミロイド沈着を認めた。同時期に,陰部の疼痛のために泌尿器科を受診し,膀胱アミロイドーシスと診断された。皮膚と膀胱の 2 臓器にアミロイドの沈着を認めたが,沈着臓器,検査所見,経過より総合的に限局性アミロイドーシスと判断した。心窩部と外陰部の皮膚症状は異なる臨床像を呈していたが,病理組織学所見よりいずれも皮膚限局性結節性アミロイドーシスと診断した。過去の報告を検討したところ,皮膚限局性結節性アミロイドーシスの臨床像は多彩であり,日常診療で見逃されている可能性があると考えた。 (皮膚の科学,20 : 299-308, 2021)

  • 西崎 絵理奈, 大原 裕士郎 , 細本 宜志 , 吉岡 希 , 山本 容子 , 磯貝 理恵子 , 山田 秀和
    2021 年 20 巻 4 号 p. 309-313
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    72歳男性,主訴は両眼瞼下垂。右踵部悪性黒色腫 Stage IVT4bN1bM1c0))に対しニボルマブ 240 mg を投与して57日目より左眼瞼下垂が出現し,71日目より両眼瞼下垂が生じ,開眼が困難な状態であったが,眼球運動には明らかな異常所見を認めなかった。血液生化学検査にて CK 値の軽度上昇を認めたが,抗アセチルコリン抗体および抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体はいずれも陰性であった。臨床経過と検査結果より,ニボルマブ投与によって誘発された免疫関連有害事象である眼筋型重症筋無力症と考え, 71日目よりプレドニゾロン 30 mg/日の内服を開始した。現在,プレドニゾロン 5mg/日に減量したが,増悪を認めていない。本例は初期よりステロイド治療を開始したことで,重症化せず速やかな改善が得られた。また,ステロイド療法併用によりニボルマブ持続投与が可能であった。ニボルマブ投与後の眼瞼下垂の報告は少なく,貴重な症例であると考えられた。 (皮膚の科学,20 : 309-313, 2021)

  • 松井 麻里 , 大下 彰史 , 五影 志津, 小森 敏史 , 浅井 純 , 加藤 則人
    2021 年 20 巻 4 号 p. 314-319
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    65歳,男性。生下時から後頭部に常色局面を認めていた。当科初診の10年前に同部位から紅色結節を生じたため,前医を受診した。皮膚生検を施行され,アポクリン腺癌と診断された。拡大切除および全層植皮術を施行され,病理組織学的所見より脂腺母斑から生じたアポクリン腺癌と診断された。 再発・転移なく経過していたが, 1 年前から前回植皮部の辺縁に皮下結節を生じ,前医を再受診した。右鎖骨上窩リンパ節腫脹があり,それぞれ生検を施行されアポクリン腺癌の再発・リンパ節転移と診断された。精査加療目的に当科を紹介され受診した。画像検査では遠隔転移を認めず,拡大切除および右頸部リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的所見から頸部リンパ節の節外浸潤を認め,術後放射線化学療法を行った。現在, 3 年経過したが,再発・転移はみられない。アポクリン腺癌は長期間経過後に再発・転移することがあるため,長期にわたり経過観察する必要がある。また,進行期アポクリン腺癌に対しては有効な治療法はいまだ確立されておらず,今後の症例の蓄積が期待される。 (皮膚の科学,20 : 314-319, 2021)

  • 多田 真知花 , 大塚 俊宏, 森脇 真一
    2021 年 20 巻 4 号 p. 320-324
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    77歳,女性。 3 ヶ月前より,左右腸骨部の皮下腫瘤を自覚した。増大傾向があるため当科を受診した。初診時,左腸骨部に手掌大の弾性やや硬の皮下腫瘤を,右腸骨部には 4×2cm大,表面に紅色隆起局面,周囲に軽度癒着のある皮下腫瘤を認めた。左右の腸骨部皮下腫瘤より生検を施行したところ,病理組織学的にはいずれも真皮から皮下組織に至る広汎な石灰沈着がみられた。血液検査ではCaPPTH 値は正常で,膠原病関連の各種自己抗体価や腫瘍マーカーにも異常はみられなかった。 骨盤部 CT 検査では左右の大臀筋外側の皮下脂肪内に石灰化主体の軟部影を認めた。以上より,本症例を特発性皮膚石灰沈着症(tumoral calcinosis)と診断した。初診時以降は増大傾向がなかったため,全摘出は行わず, 3 ヶ月に 1 回経過観察している。現在診断から 1 9 ヶ月経過しているが左右腸骨部の皮下腫瘤の大きさに変化はない。本邦における皮膚科領域での tumoral calcinosis の報告例は1983年以降で16件であり,その内多発例は自験例を含めて 3 件のみであった。腸骨部の皮下腫瘤をみた場合,多発であっても皮膚石灰沈着症も鑑別疾患の一つとして挙げる必要がある。 (皮膚の科学,20 : 320-324, 2021)

  • 冨安 弘花 , 西山 瑞穂 , 遠藤 雄一郎, 野村 尚史 , 小嶌 綾子 , 椛島 健治
    2021 年 20 巻 4 号 p. 325-331
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    78歳,男性。第 0 病日,発熱と全身倦怠感を発症したが自然軽快した。第19病日,倦怠感と紫斑を混じる紅斑が全身に出現した。全身の深部リンパ節腫脹と脾腫を認め,悪性リンパ腫を疑ったが検査結果は否定的だった。第21病日からプレドニン 20 mg/日,第25病日から 60 mg/日が投与され皮疹は第34病日に消褪した。しかし第42病日以降,貧血が進行し赤血球輸血を行った。直接 Coombs 試験陽性であり,骨髄生検で赤芽球の著減が確認されたことから,自己免疫性溶血性貧血および赤芽球癆と診断した。初診時(第25病日)の血清ヒトパルボウイルス B19 IgM は陰性だったが,第46病日に陽転していたことから,最終的にヒトパルボウイルス B19 感染症と診断した。患者に免疫不全症や溶血性貧血の既往はなかった。原因不明の紫斑をみた場合,ヒトパルボウイルス B19 感染症も考慮すべきである。 (皮膚の科学,20 : 325-331, 2021)

  • 爲政 萌子, 田中 文 , 菊澤 千秋 , 中野 仁夫
    2021 年 20 巻 4 号 p. 332-337
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    77歳女性。当科初診約 1 年半前より肺腺癌に対してペムブロリズマブを投与されていた。24クール目頃から軽度の瘙痒感を伴う紅斑が四肢に出現し,次第に範囲が拡大してきたため,皮疹発症から約 1 ヶ月後に当科を紹介受診した。原発巣と転移巣の増大がみられたため,当科初診までにペムブロリズマブはすでに終了されていた。初診時,四肢の末端優位に粟粒大から胡桃大までの不整形な角化性浸潤性紅斑が多数認められ,一部は中心に痂皮を伴っていた。病理組織像では中央部の表皮は壊死しており,その周囲の表皮には液状変性とリンパ球浸潤とともに,基底層部を中心とする多数の個細胞壊死がみられた。表皮内へは主に CD8 陽性細胞が浸潤していた。苔癬様皮疹として加療を開始するも外用治療での改善が乏しく,臨床像で紅斑の中心に顕著な壊死がみられ,組織像では表皮の個細胞壊死が目立ったことから,急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(pityriasis lichenoides et varioliformis acuta :PLEVA)に類似した病態を呈している可能性を想定して抗生剤の内服治療を行ったところ皮疹は軽快した。抗 PD-1 抗体による苔癬様皮疹の臨床像と病理組織像は多様性に富んでおり,最終的に自験例も苔癬様皮疹の範疇に含まれると判断した。肺癌を基礎疾患とした扁平苔癬を生じることはまれであり,PLEVA 様の皮疹を生じた報告例も無い。自験例では先行感染や薬剤アレルギーを疑う新規薬剤もなかったことから,ペムブロリズマブによって皮疹を生じた可能性を考えた。 (皮膚の科学,20 : 332-337, 2021)

  • 長谷川 文子 , 森戸 啓統 , 福本 隆也, 宮川 史 , 新熊 悟 , 浅田 秀夫
    2021 年 20 巻 4 号 p. 338-342
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    83歳,男性。初診の 3 ヶ月前に右前腕を虫に刺され,同部位が潰瘍化してきた。近医でジフルプレドナート(マイザー軟膏R )の外用治療を受けるも軽快しないため,当科を受診した。右前腕外側に周囲に紅斑を伴う母指頭大の潰瘍を認め,潰瘍の辺縁は虫食い状を呈していた。病理組織所見で,真皮内にリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤を認め,好塩基性の酵母様真菌を伴っていた。PAS 染色,Grocott 染色で,真皮内に多数の菌体成分を認めた。真菌培養では,灰白色の皺壁を持つビロード状の集落を認め,色素は褐色調を呈していた。スライドカルチャー法では,隔壁を有する細長い菌糸を認め,側壁や先端に円形の分生子を認めた。以上より,固定型のスポロトリコーシスと診断し,イトラコナゾール 100 mg/日の内服と局所温熱療法を開始した。潰瘍は徐々に縮小し,約 2 ヶ月後には上皮化した。自験例では,組織内に非常に多数の菌体を認めたが,長期間にわたりジフルプレドナートを外用していたことがその一因と考えられた。 (皮膚の科学,20 : 338-342, 2021)

  • 木下 祐岐, 中井 浩三 , 立石 千晴 , 河野 友香 , 岡本 光佑 , 伊藤 義彰 , 鶴田 大輔
    2021 年 20 巻 4 号 p. 343-348
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    57歳男性。既往歴 : 浸潤性胸腺腫,重症筋無力症。初診 3 ヶ月前より四肢の筋力低下,全身倦怠感,味覚障害が出現し,当院神経内科に入院となった。初診時,顔面,体幹,四肢に鱗屑を伴う角化性紅斑がびまん性にみられ,紅皮症を呈していた。病理組織像では,錯角化を伴う過角化,表皮基底層の液状変性,表皮内個細胞壊死およびリンパ球浸潤を認め,graft-versus-host diseaseGVHD)like erythroderma を呈した thymoma-associated multiorgan autoimmunityTAMA)と診断した。 低 γ グロブリン血症を呈し,緑膿菌性肺炎を繰り返すことから Good 症候群を併発していると考えられた。ステロイドパルス療法,抗菌薬投与および γ グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin : IVIG)施行後,全身状態は一時的に回復したが,その後播種性 Mycobacterium abscessus 感染症を併発し,初診10ヶ月後に永眠した。TAMA GVHD 様皮膚症状,肝障害,腸炎を発症する疾患であり,しばしば低 γ グロブリン血症や Good 症候群を併発する。胸腺腫患者にGVHD-like erythroderma が出現した場合,致死的で極めて予後不良の重篤な感染症,特に日和見感染の発症に十分留意する必要がある。 (皮膚の科学,20 : 343-348, 2021)

  • 前田 珠希 , 秋田 浩孝 , 福島 英彦 , 栃井 大輔 , 杉浦 一充
    2021 年 20 巻 4 号 p. 349-353
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル 認証あり

    53歳女性。 8 歳時に左鎖骨部皮下腫瘤を切除した。43歳頃より左鎖骨近傍に皮下腫瘤が出現した。 CT にて左鎖骨近位部と縦隔に腫瘤病変を認めたため当科紹介となった。左鎖骨部皮下血管腫と縦隔血管腫を考え,全摘術を施行した。病理学的検討では皮下腫瘤は海綿状血管腫,縦隔病変は縦隔血管腫と診断した。皮下に発症した海綿状血管腫の中で縦隔血管腫と合併した報告は自験例のみであった。海綿状血管腫は他臓器に血管腫を伴う報告があり,随伴症状を有することもあるため内臓血管腫の合併の有無の検索も必要である。 (皮膚の科学,20 : 349-353, 2021)

使用試験
  • 福島 聡 , 岩田 浩明, 村上 有美 , 松中 浩 , 尹 浩信, 清水 宏 , 森田 栄伸
    2021 年 20 巻 4 号 p. 354-360
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
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    保湿剤には様々な剤型があり,剤型によって使用感や保湿効果が異なる。皮膚乾燥性疾患の治療を継続し充分な治療効果を得るには,保湿剤を継続使用することが重要であり,患者の皮膚症状や嗜好に合った保湿剤が求められる。本研究では,保湿剤の剤型や組み合わせによる有用性および患者の満足度の差異について比較検証した。皮膚に乾燥症状を有する患者66名をローション単独,クリーム単独,ローションとクリーム併用の 3 群に分け, 8 週間 1 2 回,乾燥部位に保湿剤を塗布した。試験開始時と終了時に塗布部(頬部,前腕内側部)と無塗布部(上背部)の表皮角層水分量の測定,表皮角層解析(重層剥離度)ならびにアンケート調査をおこなった。 8 週間後,保湿剤の塗布部では,表皮角層水分量が有意に増加し,重層剥離度が有意に減少した。ローション,クリームおよび併用のすべての群で塗布前後の表皮角層水分量が有意に増加した。またクリーム群では重層剥離度が有意に減少した。アンケート調査では継続使用の希望が併用群において高かった。長期にわたる皮膚乾燥性疾患の治療においては,原疾患に対する治療とともに保湿剤を継続的に使用し続けることが重要であり,皮膚の乾燥状態や患者の嗜好に合わせて保湿剤を選択することでアドヒアランスの向上につながると考えられる。 (皮膚の科学,20 : 354-360, 2021)

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