2022 年 21 巻 3 号 p. 219-225
症例 1:79歳,男性。発症時期は不明だが右鼻翼に小結節を自覚,徐々に増大してきたため当科を受診した。初診時,右鼻翼部に直径 6mm大の中央に痂皮を伴う紅色結節を認めた。症例 2:83歳,男性。半年前から左鼻翼に小結節を自覚,徐々に増大してきたため近医より当科に紹介となった。左鼻翼部に直径 10 mm 大の出血を伴う黒色結節を認めた。部分生検にて症例 1 は有棘細胞癌,症例 2 は基底細胞癌と診断し,いずれも局所麻酔下に全層切除した。切除後の鼻翼欠損に対して耳介からの軟骨を含む複合組織移植を用いて再建した。複合組織移植は,移植片の色調が術後ダイナミックに変化していく。その色調変化にはその生着機序が関連していると考えられる。また,自験例で行った複合組織移植は,過去報告例の中でも比較的大きかった。症例 2 では移植片の一部に壊死と全体の色素沈着を認めたものの脱落はせずに生着した。自験例では,エピネフリン入りの局所麻酔薬を使用した。移植片の生着がその血管収縮作用により妨げられる可能性があり,使用されないことが多いが,自験例では,その止血作用により手術操作が行いやすくなり,移植片を愛護的に採取できた可能性がある。また,自験例で行った chondrocutaneous advancement flap による耳介再建は比較的大きな耳介欠損に対しても再建が可能であり,手技も煩雑ではないため有用な再建方法であると考える。 (皮膚の科学,21 : 219-225, 2022)