2023 年 22 巻 1 号 p. 1-6
37歳女性。 3 年前に近医にて右ナック管水腫に対して全身麻酔下に水腫切除術が施行された。術中は問題なく経過したが,抜管後に血圧低下と全身紅斑が出現した。その際,術中投与の筋弛緩薬(ロクロニウム)と症状出現直前に投与された筋弛緩薬拮抗薬(スガマデクス)が被疑薬として疑われたが,薬剤リンパ球刺激試験は両薬剤ともに陰性であった。後日,再度全身麻酔下の手術が決定し精査が必要となったため当科紹介となった。好塩基球活性化試験(basophil activation test 以下 BAT)とプリックテストを施行したところ,スガマデクスのみ陽性所見を認めたため, 3 年前の術後症状(血圧低下と全身紅斑)はスガマデクスによる即時型アレルギー(アナフィラキシーショック)であったと診断した。初回投与にも関わらず即時型アレルギーが生じた機序として,同薬の構成成分である γ-シクロデキストリンが多くの健康補助食品や化粧品に含まれているため,事前に感作が成立していた可能性が考えられた。 (皮膚の科学,22 : 1-6, 2023)