2023 年 22 巻 1 号 p. 7-12
61歳,女性。発熱と左大腿の発赤,腫脹,熱感を認め,近医にて蜂窩織炎として治療されたが改善せず,当科を紹介受診した。初診時,両大腿に発赤と熱感を伴う皮下硬結,左大腿全体の腫脹,右こめかみ,左肘の皮下硬結を認めた。病理組織では皮下脂肪織の小葉中心性に異型リンパ球浸潤と,浸潤細胞が脂肪細胞を取り囲む rimming 像を認め,浸潤細胞は CD3,CD8,TIA-1,Granzyme B 陽性,CD4,CD20,CD56 陰性であった。以上より皮下脂肪織炎様 T 細胞リンパ腫と診断し,プレドニゾロンとシクロスポリン内服による治療で症状は改善し,現在まで再発はない。本疾患は非常に稀であり,血球貪食症候群/血球貪食性リンパ組織球症を合併した場合は予後不良となる。難治性の発赤・腫脹・皮下硬結を認めた際は本疾患も鑑別に挙げ,早期に診断・治療を行う事が重要である。 (皮膚の科学,22 : 7-12, 2023)